株式会社小学館のプレスリリース
2020年は新型コロナウイルス(COVID-19)が猛威を振るい、社会システムが大きく変動しました。感染拡大対策として、世界中がロックダウンを施行。日本も緊急事態宣言を5月4日から5月31日まで続けました。強制的にテレワークや在宅勤務に移行したことで、労働者の意識にも変化が起こりました。アフターコロナ、ウィズコロナの働き方が問われている時代にこそ、働き方の根本となる、労働契約の理解が重要になります。
そこで、本日発売の、労働契約についてまとめた書籍『マンガでわかる 知らないと絶対損をする!これからの働き方 キミの生涯賃金“2億円”を守る!労働契約の方法』の原作者であり、社会保険労務士の萩原京二氏にお話を伺いました。コロナ時代の働き方について悩んでいる方は、ぜひ一読してみてください。
【萩原氏プロフィール】
萩原京二(社会保険労務士)
1963年東京都新宿区(神楽坂)生まれ。1986年早稲田大学法学部卒業。(株)東芝、ソニー生命保険(株)勤務を経て、1998年社会保険労務士として開業。2010年(株)全就連(人事関連のサービス会社)を設立。現在は、「社労士事務所の経営コンサルタント」として、全国約150事務所に対して顧客開拓・売上アップなどの指導を行うことで、間接的に中小企業(約3000社)の経営支援を行っている。著書は5万部ベストセラーの「マインドマップ資格試験勉強法」(ディスカヴァー)ほか10冊。マスコミなどの取材実績も多数。詳細はHP『ワークリテラシーの教科書』にてhttps://workliteracy.biz/
強制的に変わる働き方と振り回される人々
「2020年の年末にかけて、コロナ陽性者が増加しています。現在の11月時点では政府はまだ様子見の状態ですが、このままでは第2回目の緊急事態宣言の発動も現実味を帯びてきました」
私達は一度、緊急事態宣言下での働き方を経験しました。しかし、あまりに突然のことで企業の多くは社内制度の変更が追いついていません。この機会に改めて、前回の状況を確認してみることが必要かもしれませんね。
「働き方の変化という意味で、緊急事態宣言の前と後で大きな違いというのは、テレワークや在宅勤務ではないでしょうか。実はこれ、会社の概念が誕生して以来の大変革になります。産業革命以降の会社というのは工場労働が基本でした。その後、インターネットなどの情報革命によってオフィスワークが増えましたが、会社に集まることは前提条件でした。以前からテレワークや在宅勤務は技術的には可能でしたが、コロナという外圧によって一気に市民権を得ましたね」
政府はテレワーク助成金などに力を入れたために、コロナ禍には業務のIT化が進みました。最近では、行政機関内での脱ハンコの動きも出ています。効率化されることは良いと思いますが、何か問題はあるのでしょうか?
「例えば、2020年11月の日経新聞によると、多くの世代で、テレワークの導入によって仕事でストレスを感じる人が0.9倍と減少。しかし、25歳以下の世代は逆に1.3倍に増加しました。つまり新入社員世代はストレスが増えたのです。新入社員は仕事を覚える他に、社会人としての常識や会社ならではのルールなど、様々なことを学ばなければいけません。従来であれば先輩と行動を共にことで少しずつ学んでいったのですが、テレワークではそれが出来ません。これは今後のキャリア形成にも関わる重要な問題です。テレワークで出来るとことと出来ないことを、もっと明確にしなければいけません」
かつては“ゆとり世代の新入社員問題”が話題になったことがありましたが、今後は“コロナ世代の新入社員問題”が注目されるのかも知れませんね。
緊急事態宣言で休業が続けば賃金が6割になる未来も?
もし、緊急事態宣言が年末に施行された場合、忘年会シーズンで稼ぎ時となる飲食業界には大打撃になってしまいます。店舗が休業となれば、労働者に支払われる賃金も影響が出るのではないでしょうか?
「労働者の賃金補償は大きな問題です。通常、会社側の都合で労働者を休ませる場合、平均賃金の6割を補償しなければいけないルールになっています。ですが、コロナで収入が断たれていたら、賃金を支払うことも厳しくなります。そこで政府は、緊急事態宣言中の休業補償について、ほぼ全額(※上限あり)を肩代わりする対応をしました。この制度は2020年で終わる予定でしたが、2021年3月まで延長が決定しています。しかし、これは特例中の特例のため、いずれはサポートが受けられなくなります。その時、会社から支払われる休業補償が6割になってしまっても文句は言えないのです」
1回目の緊急事態宣言の時は、政府の補助のおかげで乗り切ることができたということは分かりました。2回目、3回目になった際、前回と同じ補償がもらえるかは確定していないということですね。
ですが、疑問としてあるのは、今回の緊急事態宣言による休業は、会社側の都合と言えるのでしょうか?
「それについて様々な見解があります。災害などの場合は会社都合とは言えませんが、今のところ、コロナが災害なのかどうかの明確な判断は出されていません。もし、コロナを災害指定した場合、毎年流行するインフルエンザウイルスをどうするかなどの問題などもあり、線引きが難しい所なのです」
自分はどう働きたいのか、という指針を持つことの重要性
アフターコロナ、ウィズコロナ時代を乗り切る為に、日本はこれからどのような働き方をしていけばよいのでしょうか?
「テレワークや在宅勤務が主流になった場合、業務範囲が明確に区分けされていないといけません。そのため、今よりも分業化が加速するはずです。その際に必要となるのは、専門分野に秀でたスペシャリスト。ですが、日本の働き方は今まで、様々な部署を経験させて総合力のあるゼネラリストを育成する、パートナーシップ型(人に仕事をつける働き方)が主流でした。しかし、これからはジョブ型(仕事に人をつける働き方)を採用して、スペシャリストを育てる時代に突入しています」
世界の主流はジョブ型ですからね。日本は終身雇用制度が前提にあったためにパートナーシップ型が定着しましたが、終身雇用が期待できない今は、グローバルスタンダードに合わせていくのが当然だと思います。
「そうですね。ただ、何よりも大事なことは、個人として“自分はどのように働きたいのか?”ということを常に意識することです。それが定まっていれば、いくら環境が変わっても振り回されなくなります。これを機に、自分の働き方を今一度考えてみてはいかがでしょうか?」
萩原氏が原作を務めた本書では、様々な労働契約の問題が分かりやすく紹介されています。気になった方は、ぜひ手にとってみてください。
【マンガでわかる 知らないと絶対損をする!これからの働き方
キミの生涯賃金“2億円”を守る!労働契約の方法】
原作:萩原京二
マンガ:大谷じろう
小学館
発売日:2020年11月26日
価格:本体1,200円+税
https://www.shogakukan.co.jp/books/09388775
〈 書籍の内容 〉
複雑な働き方改革を、マンガで平易に解説!著者自らが名付けた”労働契約エージェント”(企業と労働者の間に立ってお互いのいい関係を築くためのアドバイザー)という肩書きの主人公の、実際の仕事ぶりとケースワークを6話のエピソードで紹介。これまで支給されるのが、当たり前だと思われていた残業代やボーナス、退職金などが、支払われなくなるような事態に備えて、慌てないためのサラリーマンのサバイバル術を伝授します。