東京書籍株式会社のプレスリリース
- 20年の時を経て、加筆原稿と石森プロによる作画で復刊。
仮面ライダーは、永遠なり。
20年の時を経て、著者による加筆原稿と石森プロによる作画で復刊。
雑草や昆虫などの身近な生物を、やさしさと人間らしさにあふれる眼差しで描く筆致で知られ、昨今の中学入試・国語の最頻出作家であり、また、家族共々「仮面ライダー」シリーズのファンでもあるという著者が、仮面ライダー1号から平成ライダーにまつわる数々の謎を、昆虫生態学の視点から、子どもたちの探究心に応えるべくひとつひとつ解説。親子で読んで楽しめる科学エッセイ。
- [新装版]に寄せて
昭和、平成、令和という時代を超えて、仮面ライダーたちは今も活躍を続けている。
この仮面ライダーの壮大な物語は、一体のバッタの改造人間から始まる。
本当に、ショッカーは、とんでもないものを造り出したものだ。
- はじめに
息子の通う幼稚園で、仮面ライダーがはやっているという。
龍騎やファイズだけではない。なつかしい昔の仮面ライダーも、なのだ。ダブルライダーやV3、ストロンガーなど、かつて私たち大人が夢中になったヒーローたちが、うれしいことに21世紀を生きる現代の子どもたちをも夢中にさせているのである。
もちろん子どもたちは、龍騎やファイズなど平成の仮面ライダーシリーズも大好きなのだが、勧善懲悪で、強くてかっこいい昔の仮面ライダーも、負けず劣らず人気があるようだ。
「そうか、1号ライダーやV3ならお父さんにもわかるぞ」
子どもの頃は、友だちとライダー博士を競った私である。しかし、月日は流れ、仮面ライダーのことなどすっかり忘れて、私はいつしか大人になっていた。ところが、息子のおかげで、私は何十年ぶりかに仮面ライダーと再会することになったのである。
息子にせがまれてビデオを借りてきて久しぶりに仮面ライダーを見直した。時を経ても仮面ライダーは色あせることなく、相変わらずかっこいい。そして、なつかしい仮面ライダーの勇姿は、忙しい毎日の中で忘れかけていた少年時代を、ありありと思い出させてくれたのである。
虫かごいっぱいセミをとったり、セミやバッタ、トンボを追いかけた。眠い目をこすってクワガタもとりにいったなぁ。
なぜか頭に浮かんだのは、虫取り網を手に野山を駆け巡った思い出だった。そういえば、子どもの頃はよく虫とりをして遊んだものだ。数あるテレビヒーローの中で、仮面ライダーが特に大好きだったのは、今にして思えば仮面ライダーがバッタの改造人間だったからかもしれない。
地上を走り回り、大空を飛び交い、土に潜り、自分より重いものを持ち上げる。ミクロの体に高い能力を秘めた昆虫が、もし等身大になったとしたら……。仮面ライダーは、そんな夢を改造人間という形で実現してくれた。力の限りを尽くしたライダーと怪人たちとの死闘は、虫好きだった子供時代の私にとっては、まさにカブトムシとクワガタムシのバトルにも似たわくわく感があったような気がする。
仮面ライダーの絵を描きながら、息子がふと、こんなことを言う。
「仮面ライダーには角が二本あるんだ」
確かに仮面ライダーの頭の前面からは二本突き出たものがある。しかし、残念ながらあれは角ではない、バッタの触角である。よく知られているように、仮面ライダーはバッタの改造人間なのだ。
私は息子に話しかけた。
「仮面ライダーはね。バッタの改造人間なんだよ」
「本当?」
やはり知らなかったようだ。
昆虫の体のメカニックや異質さは、少年たちを不思議と引きつける。そんな昆虫をモチーフとしていることが、仮面ライダーの魅力の一つでもあるのだ。仮面ライダーがバッタの改造人間である、という原点に立ったとき、息子もきっと仮面ライダーの新しい魅力を発見するに違いない。
それではライダー好きの息子のために、仮面ライダーと昆虫のとっておきの物語を語り聞かせてあげることにしよう。
さあ、『仮面ライダー昆虫記』の始まりである。
・本書は2003年に実業之日本社から刊行された『仮面ライダー昆虫記』に加筆・修正を加え、新規に石森プロによる作画を加え、[新装版]としたものです。
- もくじ
[新装版]に寄せて
はじめに
第1章 なぜバッタがモチーフになったのか
●仮面ライダー1号、2号
バッタ顔の仮面ライダー/仮面ライダーに見るバッタの能力
ライダー参上の謎/なぜ、バッタが悪のエリートなのか
仮面ライダーは風の戦士/バッタ型改造人間がオートバイに乗る理由
仮面ライダー2号はなぜ赤くなったのか
●ショッカー&怪人軍団
福を呼ぶ蝙蝠男/バッタ退治の刺客/ショッカーの作戦変更
ライダーキック敗れたり/死神博士の研究センス/生き物へのまなざし
ショッカーの末路/在りし日のショッカー研究室
ショッカー顔負けの昆虫たち/ショッカーが幼稚園バスを襲う理由
ショッカーの「あきらめない心」/ショッカー首領の正体
●仮面ライダーV3
キックにこだわる赤トンボ/バッタ型改造人間とトンボ型改造人間が似ている理由
V3の擬態戦略/V3は何トンボ?/V3のトンボのめがね
第2章 民俗学的ライダー考察
●ライダーマン
ライダーマンは田んぼの神さま/蟷螂の斧
●仮面ライダーX
Xライダーのモチーフは?/神博士、灯火に親しむ
イナズマンとXライダーの共通点
●仮面ライダーアマゾン
民俗学が明かすライダーマンとの共通点
●仮面ライダーストロンガー
なぜ口笛高くやってくるのか?/日本を守るカブトムシ
それでも日本にしがみつく/ストロンガーは本当にカブトムシなのか
すべては勘違いだった/電気人間の謎/タックルと電波の関係は?
罠にかかりやすいタックル
第3章 科学の心を持つ子どもたちへ
●スカイライダー
ライダーになれなかった悲運の実力者/スカイライダーののどちんこ
スカイライダーはなぜ飛ばなくなったのか/飛ぶべきか飛ばざるべきか
バッタ型ライダーの体色/孤独相の仮面ライダー/進化したアリたち
アリの滅私奉公/哀しきがんがんじい
●仮面ライダースーパー1
ヘンリー博士の健康の秘訣/スズメバチの兵器/赤い戦闘員
Vジェットの体感速度/子どもたちとともに/何がスーパーなのか
●仮面ライダーZX(ゼクロス)
ゼクロスの意味するもの/ゲルショッカーの技術
ゼクロスの名に隠された謎/ゼクロスは忍者虫?
●仮面ライダーブラック
創世王の経歴/古生物としての仮面ライダーブラック
ベルトの進化論/戦う宿命/操られる王
●仮面ライダーブラックRX
太陽の子はショウリョウバッタ/ブラックからRXへ
仮面ライダーよ永遠に
あとがき
[新装版]あとがきにかえて――仮面ライダーは、永遠なり
参考文献
- 著者プロフィール
稲垣栄洋(イナガキヒデヒロ)
一九六八年静岡市生まれ。岡山大学大学院修了。専門は雑草生態学。農学博士。自称、みちくさ研究家。農林水産省、静岡県農林技術研究所等を経て、現在、静岡大学大学院教授。著書は『身近な雑草の愉快な生きかた』(ちくま文庫)『都会の雑草、発見と楽しみ方』(朝日新書)『雑草は踏まれても諦めない』(中公新書)『雑草に学ぶ「ルデラル」な生き方』(亜紀書房)『はずれ者が進化をつくる』(ちくまプリマー新書) 『散歩が楽しくなる 雑草手帳』(東京書籍)など五十冊以上。
<概要>
『[新装版]仮面ライダー昆虫記』
■著:稲垣栄洋
作画:石森プロ
■定価:1,650円(税込)
■四六判・216頁
■発行・発売:東京書籍株式会社
https://www.tokyo-shoseki.co.jp/books/81650