【書籍発売記念対談】たきみや×栗田唯  理論不要、1~2分で初心者が取り組める人物の描き方!NETFLIXオリジナルアニメーションにも生きている「ジェスチャードローイング」の魅力とは?

株式会社西東社のプレスリリース

出版物の制作販売を行う株式会社西東社(東京都文京区、代表取締役:若松和紀)は、2023年10月13日『1本の線で思いどおりに描ける! 魔法の人物ドローイング』を発売しました。近年、アニメーターやイラストレーターの間でジワジワと話題になっているのが「ジェスチャードローイング」という人物の描き方。理論にとらわれないメソッドで初心者にも取り組みやすいため、短期的に人物の自然なポーズが描けるようになると、一般の方でも取り組む人が増えてきています。
今回は書籍の出版を記念して、著者のたきみやさんと、師匠でありストーリーボードアーティストとしてNETFLIXオリジナルアニメ『ONI~神々山のおなり』などに携わる栗田唯さんに、ジェスチャードローイングの魅力についてお話をうかがいました。

▲写真左から栗田唯さんと、たきみやさん

  • まずはおふたりの関係性から教えてください。 

 たきみや:先生と生徒の関係ですね。はじめて出会ったのは5年ほど前になると思います。趣味としてドローイングを学ぼうと思って参加したジェスチャードローイング講座の講師のひとりが、栗田さんだったんです。 

栗田唯(以降、栗田):5年前!?そこから本を出すってすごくない? 

たきみや:ほんとそう(笑)びっくりです。当時は、ちょっとだけアナトミーとかパースとか理論的なことをかじった状態でした。でも絵の教本を開くたびにハードルの高さにげんなりしていて……。正直、私に絵は向いてないと感じている状態だったんです。そんなときにジェスチャードローイングの講座を受けたのですが、ジェスチャードローイングが何かわからず、腕の角度や服のシワなど、しっかり描くことに意識が向いてうまく描けませんでした。でも、せっかくだから先生に見てもらおうと栗田さんに声をかけたんです。 

栗田:それがこの本につながっているなんて、泣けてくるなぁ……。なんとなく、のびのび描こうとしているトライが見えたのを覚えています。講師として教えていることもあって、いろんな人の絵に触れる機会が多いので、難しく描こうとした絵か、楽しんで描こうとした絵かがすぐわかる。たきみやさんの絵は後者だった。 

たきみや:あのとき「いいじゃん!」と言ってもらえたことが、今につながっていると思います。 

  • ジェスチャードローイングとはどんな手法なのでしょう? 

たきみや:端的にいうと、短い時間で人物の「印象」を表現するドローイングです。人体の構造などはとりあえず置いておいて、モデルから感じ取ったものを自由に素早く描きます。たとえば、「リラックス感」「緊張感」などという心情的なイメージでもよいですし、「しなやかな曲線」「力強い直線」といった具体的な形状のイメージでもOK。この本ではその「印象」を1本の線で表すところからスタートしています。 

▲印象を1本の線で描くことで、その人物ならではの自然なポーズにつながるとともに、全身のバランスも整う

栗田:仕上がりは個人の感覚によるから、正解がない。それが大きな特徴ですね。でもはっきりしているのは、簡単なこと!これが一番大事! 1本の線なんて10秒もあれば描けてしまうし、人物自体も1分から2分ぐらいで描くことになる。理論は考えなくていいし、短い時間で終わる。だったらやってみよう、と思いません?

たきみや:「印象」ってなんだろうと、はじめは悩んだ時期もあったのですが、個人個人のとらえ方で自由に描いていいと気づいてからは、ドローイングがすごく楽しくなりました。はじめは豆もやしみたいなヘンテコな絵が量産されて、これでいいのかな?と不安でしたが(笑)。

栗田:誰でも取り組めることからはじめるって、とても大事なことだと思うんですよ。みんな好きなマンガとか、あこがれの絵師さんの絵とか、すごく高クオリティな絵が描けるようになりたいと思ってスタートする。でもいきなり、それを描こうとしても無理なんですよね。はじめから上手な絵を描こうと思うとついつい気張ってしまう。その反動で疲れてしまう。それはとてももったいないことだよね。

たきみや:そうですね。ジェスチャードローイングだから続けられた部分がとても大きいと思います。理論的なことって、いきなりやろうとしてもなかなか難しいんですよね。でも、ジェスチャードローイングが土台だとすごく気が楽。だって自由ですからね(笑)。土台のジェスチャードローイングに、自分が気になった理論とかテクニックをちょっとずつ取り入れて、試していくことで、だんだんと絵が上達していったと思います。

栗田:1分や2分で成果が出るのが大きいよね。納得いかなかったら、「次もうちょっとこうしてみよう」って気軽に試せるし。

たきみや:そうそう。「お尻だけ意識してみよう」とか、「肩のここがうまく描きたい」とか、そういうのをどんどん試せる。

▲印象を1本の線で描いたあと、2分で人物を描いていく様子

  • どんな人たちがジェスチャードローイングを学んでいるんでしょう? 

 栗田:仕事歴何十年っていうアニメーターさんから、ちょっと絵に興味がある一般の方まで、非常に幅広いですね。漫画家、イラストレーター、3Dアニメーター、制作進行が仕事の人もいるし。社長さんもいれば、主婦の方もいて、本当にいろいろです。 

たきみや:それぞれレベルや職業はちがっても、悩みや目的は似ている気がしませんか?「いきいきした人物が描きたい」とか「楽しく描きたい」とか。 

栗田:たしかに。ある程度絵を描いてきた人の場合は、「絵が固い」「動きがない」「絵を描くのが楽しくない」といった悩みの人が多いかなぁ。初心者の人の目的は、とにかく「自然な動きの人物を描けるようになりたい」だよね。絵の上級者でジェスチャードローイングをしている人からよく聞くのが、「絵を描くのが楽しかった感覚を思い出した」という感想。楽しみながら描けるっていうのが一番だよね。 

たきみや:不思議なことに、栗田さんの講座に参加している人は、みんな一緒に絵を描いていくうちにオープンマインドになっていきますよね。 何が好きか、どんなことにはまっているのか、どんどん発信するようになる。 

栗田:これも、ジェスチャードローイングの効果じゃないかなぁ(笑)。結局、絵を描くって、見て感じたことをアウトプットすることだから、自然に自分の好きなこととドローイングが交わっていく。それで、絵を描くことが楽しくなっていくっていうのはあると思うな。 

たきみや:私もそう思う。今でこそ舞台が大好きで、よくドローイングのモチーフにしていますが、ジェスチャードローイングをはじめたときはそこまでではなかったです。ドローイングと好きなものが交わって、好きなものがどんどん大好きになっていった感覚ですね。 

栗田:それはとてもいいことだよね。ドローイングの継続にもつながるしね。好きなアイドルでも、スポーツ選手でも、ゲームのキャラクターでも、猫でも鳥でもなんでもいいんですよ。好きなことと交わることで、絵も上達するし、自分の世界も広がるんだから。 

たきみや:この本にも、好きな舞台を描いた絵が載っているんですよ(笑)。 

栗田:マジで!? めちゃくちゃいいじゃないですか! すごいことですよ。自分が好きなことがこうして形になるんだから。あらためて、ドローイングってすごいなぁ……。 

▲たきみやさんが、好きな舞台をドローイングしたもの(ページ下部)

  • ジェスチャードローイングを行うとどんなことができるようになりますか? 

 たきみや:マンガやアニメ、イラストなどあらゆる絵につながると思います。いきいきとした自然なポーズの人物が描けるだけでなく、キャラクターの性格や感情の表現にもつながり、大きな土台になると思います。 

栗田:はじめは今の仕事につながるとは思ってなかった。今でこそいろんなアニメーションに携わらせていただいていますが、想像もしてなかったですよ。でもアニメーションにも「印象を表現する」っていうのがとても生きるんですよね。絵だけで動きや感情を伝えるジェスチャードローイングはとても役立ちました。 

▲アメリカで学んだドローイングを元に、ジェスチャードローイングを日本で教えている栗田唯さん。NETFLIXオリジナルアニメ『ONI~神々山のおなり』のストーリーボードを手掛けるなど、アニメーションの現場でも活躍する

たきみや:ジェスチャードローイングの先にあるもののひとつとして、「ストーリーボード」というものもこの本で紹介しています。栗田さんはこのストーリーボードを描くストーリーボードアーティストとして、お仕事されているんですよね。じつは巻頭で、私の人生をストーリーボードにして紹介しています。 

▲ジェスチャードローイングとの出会いをコンセプトにした、たきみやさんのストーリーボードの一部(右ページ)

栗田:ええ~~! すごい。すばらしい!  

たきみや:趣味で始めたジェスチャードローイングを続けていたらここまで描けるようになりました。ただの主婦なのに(笑)。  

栗田:それがめちゃくちゃいい! かんたんなこと、ちょっとしたことでも続けていけば世界が広がる証拠ですよ。これから絵をはじめる人は勇気づけられると思うよ。これなんか(紙面を見ながら)、セリフもないのに物語が伝わって、主人公を応援したくなりません? 特別な技術なんてそんなに使わなくても、1分や2分で描けるレベルのものが積み重なってこういったものがつくれるんですよ。それってすごいことじゃないですか? 技術がなくても、時間がなくても、そういった自己表現につながること自体が、ものすごく大きな魅力だと思います。 

  • 最後に、これからジェスチャードローイングに取り組む人にメッセージをお願いします。 

栗田:世の中には圧倒的なクオリティのイラストもたくさんある。そういう巨大なものというか、すぐにはできないようなものではなく、誰にでも取り組みやすいのがジェスチャードローイングの魅力。所詮たった1分や2分だから、いい意味で、うまくできなくてもあきらめがつく。あきらめっていうとネガティブかもしれないけど、それって楽じゃない? 

たきみや:すぐリトライできますしね。心が楽ですね。 

栗田:どうせ1、2分しかないんだから、どうせ大したことはできないんだから。それで安心する部分ってないですか? それっていいことだと思うんですよ。2時間かけたらハードルありますよ。「2時間かけたのにこのクオリティ?」みたいな。失敗したら、へこむに決まっているじゃないですか。それは、すごくしんどい。でも、ジェスチャードローイングは一瞬だから。失敗しても「1分だからね。テヘヘ」って次へ行ったらいいんですよ(笑)。 

たきみや:ルール(理論)を学ぼうとすると、立ちはだかる壁、越えるべきハードルが多すぎてくじけそうになる人も多いと思います。でも、ジェスチャードローイングのようなラフなものなら、それをベースにちょっとだけ理論を試してみようかな、という感じで取り込みやすい。気軽に実践しやすいので、継続できます。すると、どんどん手が覚えていくし、頭に蓄積されていく。自分の絵の変化がわかりやすくて、上達を実感できます。そのとき感じる「楽しい」って感覚を、みなさんに体感していただきたいですね。 

栗田:1分や2分やで!こんなん、みんなやりたくない??(再び巻頭を読みながら) 

たきみや:絵を描くことが楽しくなって、もっとルールも学ぼうと欲張れちゃいます(笑)。なので、ぜひ取り組んでもらいたいですね。 

栗田:スケッチブックのすみっこに描き始めたらもう止まりませんよ。いつのまにか続けられますよ。ぜひトライしてみてください! 

《プロフィール》

 栗田唯(くりた・ゆい) 

ストーリーボードアーティスト。サンフランシスコの美術大学AAUにて絵を学ぶ。MARZA ANIMATION PLANETで『Ninjala』、堤大介監督からのオファーで『ONI~神々山のおなり』のストーリーボードに携わり、現在はフリーランスのストーリーボードアーティストとして活動中。 アニメーションエイド、学校法人瓜生山学園京都芸術大学などで講師をつとめる。

たきみや 

学生時代から趣味で漫画を描いていたが、人物の描写にこだわりすぎて1コマに数時間をかけることも。次第に絵を描くことが苦しくなるが、ジェスチャードローイングに出会い、人物イラストを短い時間で印象深く、自然な動きで描けるようになっていくと同時に、人物ドローイングのおもしろさと奥深さを知る。現在は、学校法人瓜生山学園京都芸術大学イラストレーションコースの非常勤講師をつとめる。 

【本書概要】

■タイトル:1本の線で思いどおりに描ける! 魔法の人物ドローイング

■著者:たきみや

■発行元: 西東社

■価格:1980円(税込)

■判型・ページ数:B5判変形・192ページ

 

■会社概要

商号                : 株式会社西東社

代表者               : 代表取締役 若松和紀

所在地               : 〒113-0034 東京都文京区湯島2-3-13

事業内容              : 書籍、小冊子、電子出版物などの制作・販売

URL     : http://www.seitosha.co.jp/

■本件に関するお問い合わせ先

企業名:株式会社西東社 担当者名:柘植 TEL:03-5800-3120

Email:media@seitosha.co.jp

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