アニメデータインサイトラボ『2026年冬アニメデータ分析』公開―「検索される作品」と「語られる作品」は違う?“話題を3週間維持した”アニメを数字で読む

株式会社ブシロードのプレスリリース

株式会社ブシロード (本社:東京都中野区、代表取締役社長:木谷高明)のグループ分析組織にあたるアニメデータインサイトラボ(代表:大貫佑介)は、アニメビジネスにおける調査を実施しました。今回は、2026年冬アニメの1~3週間のデータを分析し、どの作品が視聴者の関心を維持し続けているのか、またどのような変化が生じているのかを分析していきます。報道関係の皆様におかれましては、ぜひ本情報をお取り扱いいただきますよう、お願い申し上げます。

はじめに

2026年冬アニメが放送を開始し、3週間が経過した。今季は総作品数69作品(新作48作品、続編21作品)という大規模クールだ。

本記事では、Googleトレンドによる検索量データとX投稿量データを用いて、放送開始から3週間の初速データから、今季の注目作品と視聴者行動の特徴を分析する。

今季のデータを一言で要約すると「続編が圧倒的に強い。しかし、その陰で面白い動きが起きている」となる。特に注目すべきは、検索量(トレンドスコア)とSNS投稿量(ファンスコア)が真逆の方向に動く作品が複数出現している点だ。この「乖離」にこそ、ダークホースの手がかりがある。

分析概要

分析対象

2026年冬アニメ 全69作品(新作48作品、続編21作品)

使用データ

● トレンドスコア(Google検索量)= 一般認知度

● ファンスコア(X投稿量)= ファンの熱量

分析期間

冬アニメの放送1週目~放送3週目

初速TOP作品の分析:続編の圧倒的優位性

初速トレンドスコアのTOP10中、8作品が続編で占められた。新作は『ハイスクール!奇面組』と『勇者刑に処す』の2作品のみだった。しかも『奇面組』は過去IPのリブートであり、完全新規IPとしてTOP10に入ったのは『勇者刑に処す』だけだった。

続編は放送前から「検索する理由」を持っている。前期の記憶、キャラへの愛着、「あの続きが見られる」という期待。これらはすべて、1話放送前からトレンドスコアを押し上げる燃料になる。一方、新作はタイトルすら知られていない状態からスタートする。この構造的なハンデを初速で覆すのは、年に数作あるかどうかだと考えている。

『呪術廻戦 死滅回游 前編』と『葬送のフリーレン 第2期』の2作品は、3位以下を大きく引き離しており、今季の「二強」構造を形成している。

ファンスコアに切り替えると、トレンドスコアTOP10に入らなかった作品が複数顔を出した。

5位の『Fate/strange Fake』が象徴的だ。トレンドスコアはわずか1.0で、新作の中央値2.4の半分以下にとどまっている。にもかかわらず、ファンスコアは18.4と新作の中で圧倒的な1位だった。「検索して調べる」人は少ないが、「SNSで語る」人が極めて多い。

これは「すでに知っている人だけが見ている」作品の典型的なパターンだと考えられる。Fateシリーズの既存ファンは、作品の存在を検索で知る必要がない。放送開始前から把握しており、放送が始まれば語る。この「検索を経由しない熱量」は、トレンドスコアだけを見ていると完全に見落とす。

9位の『DARK MOON -黒の月: 月の祭壇-』もトレンドスコア0.9に対してファンスコア10.3と、同様のパターンを示していた。

3週目維持率分析:「落ちない」作品を探す

初速の大きさは続編が圧倒する。では、新作はどこで勝負できるのか。

新作の価値は「どれだけ注目を集めたか」ではなく「どれだけ視聴者を手放さなかったか」で測るべきだと考えられる。初速はIP認知度や宣伝予算に大きく左右されるが、維持率は「実際に見た人が、翌週も見続けたか」をより直接的に反映する。言い換えれば、初速は「期待」を測り、維持率は「満足」を測っている。

3週目のトレンドスコア維持率で100%を超えた作品は8作品あった。つまり初週より3週目の方が検索が多い作品がこれだけ存在する。なかでも『異世界の沙汰は社畜次第』の198%が突出している。初週0.8から3週目に1.7へ、放送が進むほど検索が増えるという新作では珍しいパターンだった。

TOP10中、新作が5作品を占めている点にも注目したい。初速ランキングでは上位10作品中8作品が続編だったのに対し、維持率ランキングでは新作が半数を占めた。初速は続編が勝つが、維持率では新作が互角に戦えている。

ファンスコア維持率でもTOP10中、新作が5作品を占めた。トレンドスコア維持率と合わせると、両方の維持率TOP10に名前が出る新作が見えてくる。『ほっぺちゃん』と『ヘルモード』だ。この2作品は、検索でもSNSでも勢いが落ちていない。特にほっぺちゃんはトレンドスコア維持率112%・ファンスコア維持率101%と、両指標で100%を超えた今期新作で唯一の作品だった。

6〜8位の『ほっぺちゃん』、『ヘルモード』、『29歳独身中堅冒険者の日常』は、ほぼ横ばいで推移している。絶対値は小さいが、ファンは離れていない。3週間横ばいを維持した作品は、その後も急落しにくく、口コミのベースができている段階だと考えられる。

3週目ランキング:初速からの勢力図変化

3週目のトレンドスコアTOP10に入った新作は『死亡遊戯で飯を食う。』と『正反対な君と僕』の2作品のみだった。引き続き続編が上位を独占する構造は変わっていない。

『呪術廻戦 死滅回游 前編』は1週目の77.00から3週目に97.00へとさらに加速している。大型続編は初速が高いだけでなく、維持率も高い。これは強い作品がさらに強くなる構造であり、新作が正面から対抗するのが難しい理由でもある。

ファンスコアでは3週目に新作が4作品TOP10に入った。1週目と数は同じだが、顔ぶれが入れ替わっている。1週目にいた『DARK MOON』『ハイスクール!奇面組』に代わり、『TRIGUN STARGAZE』『正反対な君と僕』が浮上した。

トレンドスコアTOP10では新作が2作品、ファンスコアTOP10では新作が4作品という差も気になる点だ。ファンスコアの方が新作の存在感が大きいということは、新作は「広く検索される」段階には至っていないが、「見ている人は熱心に語っている」段階にはあるということだ。新作の芽は、トレンドスコアよりファンスコアに先に現れる。これは今季に限らず、クールごとの分析で繰り返し観測しているパターンとなっている。

データから読み取れる2026年冬アニメの特徴

「調べられる」と「語られる」の乖離:3つのパターン

今季の最も興味深い発見は、トレンドスコア(検索)とファンスコア(SNS投稿)が真逆の方向に動く作品の出現だ。両指標が高い作品(呪術廻戦、フリーレン)は「知名度も熱量も高い」王道のヒットパターンだが、今季はそれとは異なる乖離パターンが3つ確認された。

この乖離パターンの出現頻度が近年増えていると感じている。背景には視聴導線の多様化があるのではないか。かつてはテレビ欄やニュースサイトで新作を知り、検索して調べ、視聴し、感想を書くという一本道だった。今は、タイムラインに流れてきた感想を見て直接視聴する、配信サイトのレコメンドから入る、といった「検索をスキップする導線」が増えている。この構造変化が、トレンドスコアとファンスコアの乖離を生んでいる可能性がある。

パターンA:「検索されないが、語られ続ける」Fate/strange Fake

トレンドスコアは新作中央値の半分以下で推移するが、ファンスコアは初週から新作最大を記録し、毎週増加している。新しく検索する人はそこまで増えていないが、すでに知っている視聴者が毎週熱心に語り続けている状態だ。

このパターンは「新規が入りにくいが、既存ファンの満足度が極めて高い」ことを意味している。ビジネス的には、新規獲得よりもLTV(顧客生涯価値)で勝負するモデルに近い。Fateシリーズが長年にわたってゲーム・アニメ・小説と多メディア展開を成功させてきた基盤の厚さが、データにそのまま表れている。

パターンB:「検索は減るが、会話が加速する」多聞くん今どっち!?

検索が半減しているということは、新規流入はそこまで増えていない。だが視聴者同士の語り合いが3週目で活発化している。

このパターンは「口コミ型ヒット」の初期段階に見える。検索は「個人の行動」だが、SNS投稿は「他者への発信」だ。ファンスコアが後から伸びるということは、見ている人が他の人にも伝えたくなっているということだ。まだ検索には反映されていないが、この「語りたくなる流れ」がどこかで臨界点を超えれば、トレンドスコアも一気に動く可能性がある。

パターンC:「語られないが、検索が増える」異世界の沙汰は社畜次第

今期の新作でトレンドスコア維持率が100%を超える作品自体が珍しいなか、198%は突出している。一方ファンスコアは大幅に減少しており、「話題にはしないが、気になって調べている」という受動的な関心拡大の兆候だ。

3つのパターンの中で、最も「化ける可能性」を感じるのは、このパターンCだ。パターンA(Fate)は既存ファンベースに支えられており天井が見えやすい。パターンB(多聞くん)は口コミ拡大中だが、まだコミュニティ内に閉じている。一方パターンCは、「まだ語るほどではないが、気になっている」という潜在層の存在を示唆している。この潜在層が顕在化するきっかけが訪れた時のインパクトは、最も大きい可能性がある。

この3パターンが示唆することは、トレンドスコアとファンスコアを片方だけ見ていると、作品の本当の勢いを見誤るということだ。「調べられる」と「語られる」はそもそも異なる行動であり、その乖離パターンにこそ、表面的なランキングでは見えない文脈が潜んでいる。今後は「どちらの指標が高いか」だけでなく、「2つの指標がどう動いているか」で作品の状態を読む視点が必要だと考えている。

ダークホース予想:初速は小さいが”落ちない”3作品

ここからは、初速の絶対値は小さいが「落ち方が緩やかな作品」に注目する。

以下の3作品は初速こそ目立たないが、3週間を通じた維持率が相対的に高い。

69作品が同時に放送される状況で、視聴者は毎週「何を見続けるか」を選択している。3週間落ちないということは、少なくとも一定数の視聴者がこの選択を3回連続でクリアしたということだ。初速が大きくても翌週に半減する作品より、初速が小さくても3週間横ばいの作品の方が、「コアファン」を掴んでいる確率は高いと考えられる。

① ほっぺちゃん ~サン王国と黒ほっぺ団の秘密~

今期の新作で両指標の維持率がともに100%を超えた唯一の作品だ。トレンドスコアは右肩上がりで推移し、ファンスコアも3週目で初週水準まで回復している。多くの新作が毎週数字を落とすなかで、この安定ぶりは目を引く。

ほっぺちゃんのターゲットは明確であり(低年齢層)、この層は数字の規模は出にくいが、視聴者が離れにくい傾向がある。データの絶対値だけを見ると見落としがちだが、維持率という切り口で見ると、実は今期の新作で最も安定した数字を出しているのがこの作品だった。

② 29歳独身中堅冒険者の日常

注目すべきはファンスコアの3週連続ほぼ横ばいだ。3週間ブレなく維持しており、ファンスコア維持率TOP10の8位にもランクインしている。検索は減っているが、視聴者が離れていない。

「29歳独身」「中堅冒険者」というタイトルのワードチョイスが、特定の社会人層の共感を呼びやすい。なろう系のなかでもニッチなポジションを取っている。この「ニッチだが深い」タイプの作品にとって、配信プラットフォームの存在は追い風になりうる。テレビ放送だけの時代は、初速で話題にならなければ埋もれるしかなかった。しかし配信では、少数でも視聴完了率が高い作品はレコメンドに載りやすいとされている。初速のバズがなくても、「見た人が最後まで見る」という実績が視聴者を運んでくる可能性が高い。

③ 透明男と人間女~そのうち夫婦になるふたり~

3作品のなかでは維持率は最も低いが、ファンスコアの動きに注目したい。2週目で落ちた後、3週目で持ち直している。特定のエピソードをきっかけに、感想を書きたくなる瞬間が訪れた可能性を示す動きだ。

ラブコメ作品には「語りたくなる回」が存在する。関係性が一歩進んだ瞬間、予想外の展開があった瞬間に、SNSの反応は跳ねる傾向がある。3週目の反転がそうした回の到来を示しているなら、今後もファンスコアが波打ちながら上昇していくパターンが期待できる。ラブコメの数字は、直線的な右肩上がりではなく、「階段状」に上がることが多いと考えられる。

まとめ:続編支配の中で新作が浮上する条件

続編は「初速」と「絶対値」で圧倒している。しかし新作にもチャンスはある。そのチャンスは「初速の大きさ」ではなく「落ちないこと」が大事だと考えられる。初速が小さくても維持率が高い作品は、3週間の時点で「コアな視聴者を掴んでいる」ということだ。このコアが口コミの起点になれば、中盤以降の伸びにつながる。

トレンドスコアとファンスコアの乖離は「次に何が起きるか」のシグナルになりうる。Fate型(ファンスコアだけ高い)は既存コミュニティの深さを、異世界社畜型(トレンドスコアだけ伸びる)は潜在的な関心の広がりを、多聞くん型(ファンスコアが後から伸びる)は口コミの加速を、それぞれ示唆している。片方の指標だけで「伸びている/伸びていない」を判断するのはもったいない。

「アニメの初速」の大部分はIP認知度と宣伝投下量で決まる。であれば、新作の評価は「初速」ではなく「維持率」で行う方が、作品そのものの力をより正確に反映するのではないか。これは今季に限った話ではなく、アニメ業界がKPIを設計する上で、重要になると考えられる。

本稿の分析は放送開始3週間時点のスナップショットに過ぎない。クール中盤に改めて振り返った時、ここで挙げたダークホースがどう動いているか。続報をお楽しみに。

・レポート著者
株式会社SevenDayDreamers
湯通堂 圭祐
株式会社マクロミルでデータサイエンティストとして複数の新規事業を立ち上げ、その後、FiNC Technologiesにてデータ分析、グロースハック、プロダクト開発、経営企画、人事の責任者を歴任。現在は、株式会社SevenDayDreamersを創業し、データとAIを活用してコンテンツIPの価値最大化に取り組む。

・レポート編集

アニメデータインサイトラボ

代表:大貫 佑介

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© 山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会

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