作家デビュー30周年記念作品にして、総頁数912頁の大長篇、「物語作家いしいしんじ」のすべてが注ぎ込まれた、まさに畢生の大作での受賞です!
株式会社新潮社のプレスリリース
小さな舟で湖に漕ぎだす若い男。釣り竿にくくられた蓄音器のまっすぐな針が、百年にわたる一族の「ものがたり」を釣りあげる──。
遠く 遠いところから お客さんきはるよ
ちくおんきとうみのこと だいたい わかったはるよ
公開中のアニメ映画「トリツカレ男」の原作者としても話題のいしいしんじさん。デビュー30周年記念作品である本書『チェロ湖』の舞台は、弦楽器のかたちをした大きな湖(チェロ湖はじつは、地理的には琵琶湖とぴったり重なっています)。北西の集落・風津(おとつ)から舟を出す若い男。野鳥の声の録音を生業とする彼が釣りあげるのは、コアユだけではない。釣り糸の先に、祖母が遺した蓄音器の針をくくって湖水に垂らすと、そのまっすぐな針が、百年にわたる一族四代の「ものがたり」を釣りあげる。風の音、鳥のさえずり、駆ける馬、眠るねこ、レコード、オーケストラ、茶会、建築、数々のうた……。さあ、はじまり、はじまり!
【装画は100%ORANGEさん】
912ページの巨大な本は、青い湖の色で包まれています。蓄音機を聴く青年、湖に浮かぶチェロ、湖畔を駆ける馬など、ものがたりの要素をカバーと表紙の両方にちりばめてくださったのは、100%ORANGEさん。タイトル、著者名も書き文字です。湖の波紋、タイトル等には透明箔がほどこされ、ページ数から想像する重厚さとは相反した軽快な本に仕上がっています。
【芸術選奨文学部門文部科学大臣賞 贈賞理由】
釣りをし、料理をし、音楽を聴き、土地のことばで語り合う。愛用の楽器を奏で、歴史に翻弄されながら生のバトンを次世代に手渡す。いしいしんじは大長篇『チェロ湖』で、デジタル効率化に覆われる前の人間の営みを、五感で受けとり創りだすものへと再生させた。物語性では『古事記』に、自然描写では『新古今和歌集』にまでさかのぼる日本語による芸術表現の根を継いで、あらたな葉を繁らせ、見たことのない花を咲かせることに成功した。
【書籍内容】
弦楽器のかたちの湖にボートで漕ぎだす若い男。竿の先に括られた蓄音器のまっすぐな針が、一族四代、百年にわたる「ものがたり」を釣りあげる。野人めいたタフな祖父、蓄音器に魅せられた祖母、チェリストの母、神出鬼没の建築家の父、風の音、鳥のさえずり、レコード、オーケストラ、いくつもの歌……心震わせる圧倒的大長篇!
【著者紹介】いしいしんじ
1966年、大阪生まれ。京都大学文学部仏文学科卒。2000年、初の長篇『ぶらんこ乗り』刊行。2003年『麦ふみクーツェ』で坪田譲治文学賞、2012年『ある一日』で織田作之助賞、2016年『悪声』で河合隼雄物語賞を受賞。その他の作品に『トリツカレ男』『プラネタリウムのふたご』『ポーの話』『みずうみ』『マリアさま』『息のかたち』など。アニメ映画『トリツカレ男』(高橋渉監督)が公開中!
【書籍データ】
【タイトル】チェロ湖
【著者名】いしいしんじ
【発売日】2025年10月30日
【造本】四六判変型 上製本カバー装
【定価】5500円(税込)
【ISBN】978-4-10-436305-6